橋爪謙一郎×柴田典子 対談③

 葬儀はもっと、

 感情を出せる場であっていい!



対談  「7つのケア」さえ整えば
 きっといい葬儀はできる!


 
柴田 そう考えると葬儀とは、必ずしも悲しむだけの場ではなく、生きてきた人生に感謝し、表現するための時間なのではないかと思います。


橋爪 ご本人にとっても遺族の方にとっても、表現の儀式なのですね。葬儀はもっと、感情をストレートに出せる場であっていいと思います。


柴田 特に団塊世代の方は、自分の人生を自分で決めたいという方が多く、ご自身の葬儀に対する要望も強いでしょうね。そのとき、自分勝手なものではなく、家族の方にも納得できるものにしていくにはどうすればいいかが、本人にも葬儀業界にも問われているのではないでしょうか。
 その実現のために、葬儀社は式の時だけでなく生前にも死後にも、もっとたくさんのことができるはずです。

 一般的に「死のケア(デス・ケア)」は7つの要素で成り立っていると言われています。

①生前準備のケア
②遺体のケア
③遺族のグリーフケア
④葬式を行うことのケア
⑤葬式に集まる人のケア
⑥死後の事務処理のケア
⑦喪(式終了後)のケア

この7つが整えば、ご本人にとっても遺族の方にとっても、よりよい終末期が迎えられると。


橋爪 ただ、7つすべてを葬儀社が定義付けて、具体的な仕事に落とし込むのはなかなか難しい。これらを通して共通しているのは、遺族の方の心をどう支えていくかということで、その気持ちを大事にしてほしいですね。


柴田 もちろんエンバーマーや法律のプロに頼る部分はありますが、葬儀社が「ご遺族のため」を思えば専門家への橋渡しもできるはず。そういうことって昔は、もっと自然にできていたと思います。


橋爪 よく、「葬儀の内容は不透明だ」という批判が日本ではされますが、結局、葬儀社がしてくれること、できることが不透明なのだと思います。一体どういう考え方でケアしてくれるのか、どこまでケアしてくれるのか。そこが分からないから、葬儀社を選べない。人が死んだ後の混乱の中で、手っ取り早く式をやってくれそうなところにやむなく頼むということになります。


柴田 その判断をするためには、死後の時間的余裕も必要です。自分の父を看取った体験からも、遺族にとっては自分の気持ちを整理し、葬儀社にじっくり話を聞いてみることが大切なのだと思います。エンバーミングには、大切な時間を与えてくれるという意味もあるのではないでしょうか。


橋爪 時間を作る上でも、また安らかな死に顔を作る上でも、エンバーミングは極めて大切なのです


 悲しみに寄り添える
 葬儀社を選ぶ



橋爪 最終的には、遺族の中にすべて答えがある。私が米国で一番学んだのはこのことです。葬儀サービスを提供する側は、遺族の方、あるいは生前のご本人から、要望をしっかりと引き出し、受け止めなければいけない。いわば、遺族の方に試されているのです。


柴田 本当にその通りですね。どれだけ心寄り添える存在になれるのか、葬儀社はそうした考え方でやっていかなければならないと思います。


橋爪 家族の中だけで悲しみを受け止めるのは、元々困難なことなのだと思います。だから私は、遺族の方に「1人で背負い込む必要はありませんよ」とよく言います。頼れる他者を作るということは、とても大切なことなのです。


柴田 やはり遺族の方にとって、悲しみを乗り越えるということは容易ではありません。人が亡くなった後の空虚感は、想像しているよりもはるかに長い時間続きます。また、家族の中でも、その人が亡くなったことに対するとらえ方が異なっていて、支え合うことが難しい場合もあります。  だからこそ家族の外にも相談できる人、頼れる人を作るべきです。


橋爪 使える人、人的リソースが一体どこにいるのかをあらかじめ知っておくこと。これが極めて重要で、葬儀社もいわば、その一つなのでしょう。


柴田 昔は世話好きな近所の人もいましたけど、今では「おひとりさま」でいらっしゃる方も多いですから。葬儀社が寄り添える存在となる意義は、今後もっと大きくなると感じています。


橋爪 自分らしいエンディングを迎えるために、あるいは、大切な人のエンディングを行うためには、誰に相談するべきなのか。そういう消費者の視点で、葬儀社を見てほしいと思います。情報を得て価値判断をする消費者が増えれば、葬儀社の間で切磋琢磨が生じ、結果的に葬儀の質は上がっていくに違いありません。


柴田 お金だけでなく、自分たちにとって本当に大切なものは何なのか。それを考えていくところがはじめの第一歩ですね。



(左)橋爪謙一郎さん、(右)柴田典子さん
橋爪謙一郎(はしづめ・けんいちろう)

株式会社ジーエスアイ代表。米フューネラル・ディレクター国家試験に合格、カリフォルニア州エンバーマーライセンスを取得。現在は日本でグリーフサポート、エンバーミング普及に努める。
著書に『お父さん、「葬式はいらない」って言わないで』など
柴田典子(しばた・のりこ)

株式会社オフィス・シバタ代表、1級葬祭ディレクター。神奈川県内の葬儀社で葬祭会館総支配人、取締役典礼部長等を経て、05年に独立。エンディングデザインコンサルタントとして各種研修、講演会等を精力的に行う。
新聞・雑誌・テレビでも活躍している


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